生物地球化学:二酸化炭素濃度への草原バイオマスの応答を決定するのは年間降水量ではなく季節的降水量である
Nature 511, 7511 doi: 10.1038/nature13281
大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は生態系の生産力を高めると考えられるが、それがどの程度なのかは、特に気温や降水量の変動が伴う場合には極めて不明確である。CO2濃度に対する生態系の応答は、生物地球化学的フィードバックによって複雑化しているが、炭素貯蔵やそれに伴う気候温暖化の鈍化を予測するためには解明が必要である。水循環を介したフィードバックは特に重要で、その生理学的特性はよく分かっている。すなわち、CO2濃度の上昇は気孔コンダクタンスを低下させて植物の水利用効率(植物の単位乾燥物質量当たりの生産に必要な水の量)を高める。そのため、CO2濃度への応答は水の量が限られる場合に最も強くなると考えられるが、このことを示す結果は、一部を除いて、多くの実験では得られていない。今回我々は、混合型のC3/C4温帯草原でCO2濃度上昇による地上部バイオマスの増大に見られる大規模な年々変動が、季節的な総降水量によって正確に予測できることを示す。CO2濃度への応答に対して、夏季の降水量は正の影響を及ぼしたが、秋季および春季の降水量は負の影響を及ぼした。従って、CO2濃度上昇の影響は、主として夏季と秋季/春季の降水量のバランスに依存していた。この一因は、冷涼で多湿な季節の多雨が窒素の制限につながって、CO2濃度上昇によるバイオマスの増大が減弱し、場合によっては抑止されることである。この予測は、実験区画の気温を2°C上げても上げなくても有効で、C3植物と総バイオマスに関して同様であり、それによってCO2濃度上昇に対する生態系の応答について説得力のある一般化が可能となることは、重要である。複数の気候予測から、年間の総降水量が安定した場所でも降水時期の大規模変化が予測されているため、この新しい考察は特に有用である。今回の知見は、CO2濃度上昇実験の結果に現れた差異を解消したり、CO2濃度への応答に対する降水量の季節的影響の差異に敏感でないモデルの構築や解釈を改善したりするのに役立つだろう。

