構造生物学:アゴニストが結合したヒトP2Y12受容体の構造
Nature 509, 7498 doi: 10.1038/nature13288
P2Y12受容体(P2Y12R)は、ヒトで発現されている8種類のP2YRファミリー受容体の1つで、血小板凝集を阻害する臨床薬の標的として最も重要なものの1つである。P2Y12Rへの変異導入やモデル作成による研究からはリガンドの結合についての有用な知見が得られているが、P2Y12Rでのアゴニスト、アンタゴニストの認識と機能については、分子レベルではほとんど解明されていない。今回我々は、完全アゴニストである2-メチルチオ-アデノシン-5′-二リン酸(2MeSADP、内在性のアゴニストであるADPによく似た類似体)と複合体を形成したヒトP2Y12Rの2.5 Åの分解能での構造と、これに類似のATP誘導体2-メチルチオ-アデノシン-5′-三リン酸(2MeSATP)と複合体を形成したP2Y12Rの3.1 Åの分解能での構造を報告する。これらの構造、およびアンタゴニストであるエチル 6-(4-((ベンジルスルフォニル)カルバモイル)ピペリジン-1-イル)-5-シアノ-2-メチルニコチン酸(AZD1283)と結合したP2Y12Rの構造から、ヌクレオチドリガンド複合体と非ヌクレオチドリガンド複合体との間で、細胞外領域に非常に大きなコンホメーション変化が起こっていることが明らかになった。このような変化のさらなる解析から、クラスAのGタンパク質共役受容体(GPCR)δグループにおけるリガンド結合の他と異なる全体像についての手がかりが得られた。アゴニストと非ヌクレオチドアンタゴニストは、P2Y12R内で異なる向きに配置されていて、結合ポケットは部分的にしか重なり合わない。アゴニストが結合したP2Y12Rの構造から、P2Y12Rによるアゴニスト認識についての長年にわたる疑問に答えが得られ、これまでアゴニストの結合に関与するという報告のなかった複数のアミノ酸残基との相互作用が明らかになった。結合ポケットへのアゴニストの接近に、高度な柔軟性を持つ細胞外領域の大規模な再編成が必要となるGPCRの例は、我々の知るかぎりこれが初めてであり、従ってこの構造と結合の研究からは、P2Y12Rのアゴニストやさまざまな種類のアンタゴニストの薬理学的性質や作用機序について、そしておそらくは他のよく似たP2YR類にも関わる貴重な考察が得られるだろう。

