医学:マラリア原虫では転写スイッチが性的発達への運命拘束を引き起こす
Nature 507, 7491 doi: 10.1038/nature12920
多くの寄生生物の生活環には、全く異なる宿主間での移動が含まれており、こうした寄生生物はそれぞれの特殊化したニッチに適合した複数の発生段階を経る必要がある。マラリア原虫(Plasmodium spp.)がヒトから媒介昆虫である蚊へ移動するには、赤血球内で増殖する無性段階から、分裂を行わない雌雄生殖母体(ガメトサイト)へ分化しなければならない。生殖母体は1880年に初めて記載されたが、生殖母体形成への発生拘束に関わる分子機構についての理解は極めて限られており、発生で非常に重要なこの変化段階の中断は長年にわたって試みられてきたが、成功していない。本研究では、DNA結合タンパク質PfAP2-Gの発現レベルが、生殖母体形成レベルと強く相関していることを明らかにする。我々は、互いに独立した正遺伝学的手法と逆遺伝学的手法を使って、PfAP2-Gの機能が原虫の性分化に必須であることを実証した。また、全ゲノムでのPfAP2-G関連モチーフの出現と、PfAP2-G欠失による大規模な転写変化を組み合わせることで、初期の生殖母体遺伝子がPfAP2-Gの標的候補であることを明らかにし、PfAP2-Gによるこれらの遺伝子の調節が、生殖母体遺伝子が野生型レベルでの発現に不可欠であることを示す。無性の血液段階にある原虫では、pfap2-gはエピジェネティックにサイレンシングされた遺伝子座セットの中にあるらしく、これらは自発的に活性化しやすい。確率論的な活性化は、生殖母体産生のベースラインを低くする単純な機構となる。総合すると、これらの知見はPfAP2-Gがマラリア原虫における有性段階への成長のマスター調節因子であることを明らかにしており、寄生性原生動物で分化決定を制御する転写スイッチの初めての発見といえる。

