細胞:シトルリン化は多能性とヒストンH1のクロマチンへの結合を制御する
Nature 507, 7490 doi: 10.1038/nature12942
シトルリン化は、タンパク質内のアルギニン残基を非コードアミノ酸のシトルリンへ変換する翻訳後修飾である。この修飾は正電荷の喪失につながるので、水素結合能を低下させる。シトルリン化は、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PADI)と呼ばれる脊椎動物の組織特異的酵素の小さなファミリーにより行われ、自己免疫疾患やがん、神経変性疾患、プリオン病、血栓症など、さまざまな病的状態の発生と関連する。にもかかわらず、シトルリン化の生理機能についてはよく分かっていない。だが、コアヒストンのシトルリン化は転写調節やDNA損傷応答と関連付けられている。PADI4(別名PAD4またはPADV)は核局在シグナルを持つ唯一のPADIであって、これまでに骨髄細胞で働くことが示されており、感染に対する自然免疫応答の際の大規模なクロマチン脱凝縮を仲介する。本研究では、Padi4の発現と酵素活性が、基底状態の多能性という条件下で、またマウスの再プログラム化の際にも誘導されることを示す。Padi4は多能性転写ネットワークの一部であり、主要な幹細胞遺伝子の調節エレメントに結合して、それらの発現を活性化する。Padi4を阻害すると、初期マウス胚での多能性細胞の割合が低下し、再プログラム化の効率が大幅に低下する。我々はバイアスをかけないプロテオーム的手法を用い、凝集クロマチンの生成に関わるリンカーヒストンH1バリアントがPADI4の新たな基質であることを突き止めた。H1のDNA結合部位中にある1個のアルギニン残基がシトルリン化されると、H1がクロマチンから離れて、クロマチンの全体的な脱凝縮が起こる。併せて考えると、今回の結果は多能性の調節におけるシトルリン化の役割を明らかにし、シトルリン化がクロマチン凝縮を調節する新たな機構についての手がかりをもたらすものである。

