遺伝学:酵母の大集団における単一細胞タンパク質量の変動の遺伝学的特徴
Nature 506, 7489 doi: 10.1038/nature12904
個体間の差異の一部はDNA塩基配列の違いによって生じているが、一般的な疾患をはじめとするほとんどの形質の差異の遺伝的な基盤は、部分的にしか分かっていない。多くのDNA変異体は、1つあるいは複数の遺伝子の発現レベルを変化させることによって表現型に影響を及ぼす。このような変異の影響は発現量的形質遺伝子座(eQTL)として検出可能である。従来のeQTLマッピングでは研究サンプルの各個体に対して大規模な遺伝子型と遺伝子発現のデータが必要であるため、ヒトでもモデル生物でもサンプルサイズが数百個体に限定され、統計力が低下している。その結果、多くのeQTLが高い確率で見逃され、影響の小さめなものは特に見逃されやすい。さらに、ほとんどの解析では、遺伝子発現の指標としてタンパク質量ではなくメッセンジャーRNA(mRNA)量が用いられている。質量分析によるプロテオミクスを用いた解析では、同じ遺伝子のeQTLとタンパク質QTL(pQTL)の間に見られた予想外の違いが報告されているが、こうした解析ではサンプルサイズがさらに限定される。今回、我々は出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)でタンパク質発現に影響を与える遺伝子座を明らかにするための強力な手法を紹介する。我々は遺伝的なばらつきの大きい細胞からなる非常に大きな集団について緑色蛍光タンパク質(GFP)タグを用いて単一細胞のタンパク質量を測定し、また、プールした塩基配列を用いて数千に及ぶ高タンパク質量の個体と低タンパク質量の個体についてゲノム全体にわたる対立遺伝子頻度を比較した。我々はこの方法を160個の遺伝子に適用し、1遺伝子当たりの遺伝子座をこれまでの研究よりもさらに多く検出した。また、特定の遺伝子についてタンパク質量に影響する遺伝子座とmRNA量に影響する遺伝子座の間により密接な対応があることを見いだした。我々が検出したほとんどの遺伝子座は複数のタンパク質に影響を与える「ホットスポット」に集まっており、いくつかのホットスポットは我々が調べたタンパク質の半分以上に影響することが分かった。これらのホットスポットに存在する変異は遺伝子調節ネットワークに重大な影響を及ぼしており、酵母の株間での細胞生理学的性質の遺伝的変動についての手がかりを与えてくれる。

