細胞:ヒトの新しい基底状態ナイーブ型多能性幹細胞の誘導
Nature 504, 7479 doi: 10.1038/nature12745
マウスの胚性幹(ES)細胞は、胚盤胞の内部細胞塊から分離され、白血病抑制因子(LIF)による外因性刺激およびERK1/ERK2とGSK3βのシグナル伝達の低分子による阻害(2i/LIF条件と呼ばれる)を与えることにより、ナイーブ型内部細胞塊様の形態で、in vitroで維持できる。ナイーブ型多能性の特徴には、Oct4(Pou5f1とも呼ばれる)の遠位エンハンサーによる転写の駆動、X染色体の不活化前状態の保持、およびDNAメチル化と発生調節遺伝子プロモーター上でのH3K27me3抑制性クロマチン標識の蓄積の全体的な低下がある。2i/LIFを取り除くと、マウスのナイーブ型ES細胞は、着床後のエピブラストに類似したプライム型多能性状態に移行できる。ヒトES細胞は、マウスのナイーブ型ES細胞といくつかの分子的な特徴を共有するが、マウスのプライム型のエピブラスト幹細胞(EpiSC)ともさまざまなエピジェネティックな特性を共有する。そうした特徴には、OCT4発現維持のために近位エンハンサーエレメントを主に使用すること、雌性ヒトES細胞のほとんどにX染色体不活化の傾向が顕著に見られること、DNAメチル化の増加、および細胞系譜調節遺伝子上でのH3K27me3の顕著な蓄積と二価ドメインの獲得がある。マウスES細胞の特徴に対応する分子的、機能的な特徴を持つ、ヒトの基底状態ナイーブ型多能性をin vitroで確立できるかどうかはまだ明らかになっていない。我々は、すでに確立されたヒトのプライム型ES細胞、誘導多能性幹(iPS)細胞の再プログラム化を介した体細胞、あるいは直接胚盤胞から、遺伝学的に修飾されていないヒトのナイーブ型多能性幹細胞の誘導を促進する明確な条件を確立した。今回検証された新しいナイーブ型多能性細胞は、マウスのナイーブ型ES細胞と非常によく似た分子的特徴および機能的特性を保持しており、また、従来のヒトのプライム型多能性細胞とは異なっている。このような特徴として、ヒトのナイーブ型iPS細胞をマウス桑実胚へ顕微注入すると、器官形成に至る異種間キメラマウス胚が作製できることが挙げられる。以上より、我々の知見は、再生医療、患者特異的iPS細胞による疾患モデル作製、そしてin vitroおよびin vivoでのヒトの初期発生研究への新たな道を開くものである。

