遺伝学:クロマチン結合マップから明らかになるプロモーター–エンハンサーの長距離にわたる動的相互作用
Nature 504, 7479 doi: 10.1038/nature12716
多細胞生物において、転写調節は細胞系統分化と細胞運命決定を形作る中心的な機構の1つである。転写はプロモーターとそれに対応する遠位調節エレメント間での動的なクロマチンの配置を必要とする。これらの相互作用は、三次元的な核空間の中で転写工場と呼ばれる大きな個々のRNAポリメラーゼ集合体で起きていると考えられていた。しかし、クロマチンの結合性の動的な性質の全ゲノムレベルでの特徴は分かっていない。今回、我々はRNAポリメラーゼIIの前開始複合体をもっぱら認識する抗体を用いてペアエンドにタグ付けする手法によるクロマチンの相互作用解析により、多能性胚性幹細胞、神経幹細胞と神経球幹細胞/前駆体細胞という3種のマウス細胞で進行する分化系列拘束の転写のインタラクトームを調べた。我々の包括的なクロマチン結合マップによって、およそ40,000個の長距離相互作用が明らかになり、正確なエンハンサー–プロモーター関連が示唆され、細胞種特有のクロマチン構造が詳しく記述された。複雑な調節レパートリーの解析から、プロモーターと遠位エンハンサーの間に大規模な共局在があることが示される。ほとんどのエンハンサーが最も近い活性化した遺伝子を越えた所に位置するプロモーターと結合しており、直線的に並ぶことだけがエンハンサーの標的選択を誘導する唯一の原則ではないことを示している。プロモーターとエンハンサーの相互作用は高い細胞種特異性を示すが、相互作用に関連するプロモーターは一般に共通していて、異なる細胞中で大部分が活性であることが分かった。クロマチンの結合ネットワークから、再プログラム化機能に極めて重要な遺伝子は胚性幹細胞内で互いに物理的に近い位置で転写されていることが明らかになり、クロマチン構造と協調された遺伝子発現とを結びつけている。我々の研究は、空間的、時間的なゲノム構造と、発生過程の協調におけるそれらの役割について全面にわたる詳細な分析の土台となるものである。

