医学:ACE2受容体を利用するコウモリ由来SARS類似コロナウイルスの単離と特性解析
Nature 503, 7477 doi: 10.1038/nature12711
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)によって引き起こされた2002~2003年の世界的流行は、近年の歴史における公衆衛生関連事象のうちで最も重要なもの1つだった。現在も進行中の中東呼吸器症候群コロナウイルス感染の発生は、このグループのウイルスが依然として大きな脅威であり、その分布域が以前に考えられていたよりも広いことを示唆している。コウモリはこれら両方のウイルスの自然界におけるリザーバーと考えられてきたが、SARS-CoVの始祖ウイルスをコウモリから単離する試みは成功していない。中国、ヨーロッパおよびアフリカで、多様なSARS類似コロナウイルス(SL-CoV)がコウモリから見つかったことが現在までに報告されているが、どれもSARS-CoVの直接的始祖ウイルスとは考えられていない。それは、SARS-CoVとの系統学的不一致に加えて、それらのウイルスのスパイクタンパク質がSARS-CoVの細胞受容体分子であるヒトアンギオテンシン転換酵素II(ACE2)を利用できないからである。本論文では、中国雲南省に生息するチュウゴクキクガシラコウモリ(キクガシラコウモリ科)由来の2種類の新規なコウモリコロナウイルスRsSHC014およびRs3367の全ゲノム配列を報告する。これらのウイルスは、以前に同定されたコウモリコロナウイルスのいずれよりもSARS-CoVとの近縁性がずっと高く、特にスパイクタンパク質の受容体結合ドメインでそれが著しい。最も重要なのは、コウモリの糞便サンプル由来の生きているSL-CoV(コウモリSL-CoV-WIV1)がVero E6細胞で初めて分離されたことである。このウイルスはコロナウイルスの典型的な形態を持ち、塩基配列はRs3367と99.9%同じであり、ヒト、ジャコウネコおよびチュウゴクキクガシラコウモリのACE2を細胞侵入のために利用する。予備的なin vitro試験では、WIV1も幅広い種に対する親和性を持つことが示された。我々の結果は、チュウゴクキクガシラコウモリがSARS-CoVの自然界におけるリザーバーであること、また一部のコウモリSL-CoVによるヒトへの直接感染は中間宿主を必要としない可能性があることについての、現在までで最も強力な証拠となる。これらはまた、世界的流行に備えるための戦略として、新興疾患頻発地域でのハイリスク野生生物グループを標的とする病原体発見プログラムの重要性を明確に示している。

