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量子情報科学:薄膜分子半導体におけるスピンを利用した情報処理の可能性

Nature 503, 7477 doi: 10.1038/nature12597

有機半導体は、エレクトロニクスや光学に応用し、またスピンを利用した情報技術、つまりスピントロニクスにも応用するため精力的に研究されている。スピントロニクスで基本となる量は、ポピュレーション緩和時間(T1)と位相記憶時間(T2)である。T1は古典ビットの寿命の尺度である。この場合、古典ビットは外部磁場と平行か反平行のいずれかの方向を向いたスピンによって実現される。T2は、量子状態の位相に符号化された量子ビットの対応する寿命の尺度である。今回我々は、薄膜形状の銅フタロシアニンでは、T1T2が驚くほど長くなることを立証している。青色顔料の銅フタロシアニンは、化学的に修飾できる有機半導体で、広く使われていて安価であり、デバイス製造に使われるタイプの薄膜形状に容易に加工処理できる。安価な閉サイクル冷凍機を使って到達可能な温度である5 Kにおいて、T1は59 ms、T2は2.6 μsであり、液体窒素の沸点より少し高い80 Kでは、これらはそれぞれ10 μsと1 μsであることから、薄膜銅フタロシアニンの性能は、同じ温度範囲において単一分子磁石より優れていることが実証された。T2がスピンを操作するパルスの幅より2桁以上長いことから、銅フタロシアニンは量子情報処理に有望であると考えられる。また、長いT1は、プラスチック基板上の全有機デバイスにおける古典ビットの中期保存の可能性を示している。

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