免疫学:腸の炎症の起点となるパネート細胞
Nature 503, 7475 doi: 10.1038/nature12599
オートファジー関連因子遺伝子ATG16L1(autophagy related 16-like 1)がクローン病の遺伝的リスク因子であることが分かり、オートファジーがクローン病に重要な役割を果たすことが明らかになっている。極めて高頻度に見られるATG16L1リスク対立遺伝子、すなわちマウスの機能低下型対立遺伝子のホモ接合は、パネート細胞の機能異常を引き起こす。しかしAtg16l1HMマウスでも小腸炎は自然発症しないため、ATG16L1が病気にどのような仕組みで関係するのかは、いまだにはっきりしていない。小腸上皮細胞で異常タンパク質応答(UPR)経路の転写因子であるXbp1(X-box binding protein-1)を欠失させると(この遺伝子のヒトオルソログには珍しい炎症性腸疾患リスク変異体が存在する)、小胞体ストレス、パネート細胞の機能障害が起こり、腸炎を自然発症する。小胞体ストレス(その機構は未解決である)は炎症性腸疾患の上皮によく見られる特徴であり、またクローン病の遺伝的リスク因子のいくつかは、パネート細胞に影響を及ぼす。今回我々は、小腸上皮細胞のUPR(Xbp1ΔIEC)とオートファジー(Atg16l1ΔIECあるいはAtg7ΔIEC)のどちらか一方が機能しなくなると、互いに他方の機能が代償的に促進されることと、2つの機能を両方とも阻害するとクローン病に似た重度の全層性回腸炎を自然発症することを明らかにする。Xbp1ΔIECマウスでは、機能低下を起こしたパネート細胞でオートファゴソーム形成が見られ、これがPERK(protein kinase RNA-like endoplasmic reticulum kinase)、翻訳開始因子2α(eIF2α)、転写因子ATF4(activating transcription factor 4)を介して小胞体ストレスに結びつく。回腸炎は常在細菌叢に依存しており、小腸上皮細胞死の増加、イノシトール要求性酵素1α(IRE1α)が制御するNF-κB活性化、腫瘍壊死因子シグナル伝達が関わっており、これらはオートファジーが機能しないときには相乗的に亢進する。ATG16L1はIRE1αの活性を抑制し、小腸上皮細胞でオートファジーが亢進すると、小胞体ストレスによって誘発された腸の炎症が軽減し、NF-κBの過剰な活性化が緩和され、小腸上皮細胞死が抑制される。パネート細胞で特異的にXbp1を欠損させると、小胞体ストレス、オートファジーが誘発され、回腸炎が自然発症する。従って、遺伝的、環境的に制御されたパネート細胞のUPR機能がATG16L1の機能低下による腸の炎症発生の閾値を決めており、そのため回腸のクローン病はパネート細胞の特異的な疾患の可能性がある。

