量子物理学:レビトンを用いた電子量子光学のための最小励起状態
Nature 502, 7473 doi: 10.1038/nature12713
量子系の操作には、純粋な量子励起のオンデマンド生成が重要となるが、それはフェルミオン系では特に難しい。これは、どのような摂動もフェルミエネルギー以下の状態全てに影響を及ぼし、その結果、粒子励起と空孔励起の複雑な重ね合わせが生じてしまうためである。しかし、20年近く前に、量子化磁束のローレンツ型時間依存ポテンシャルから、たった1個の粒子のみが存在し、空孔が存在しない最小励起を生成できると予言された。今回我々は、量子点接触に電圧パルスを印加することにより、このような準粒子(以下ではレビトンと呼ぶ)を導体中にオンデマンドで生成できることを報告する。この励起を電子ビームスプリッターで分割して発生させた電流雑音を用いて、この励起の数を測定した。最小励起状態がローレンツ型パルスで観測されたのに対し、これ以外のパルス形状では空孔からの大きな寄与が存在した。さらに、エネルギー領域ではショット雑音分光により、また時間領域では電子Hong–Ou–Mandel雑音相関測定により、レビトンのふるまいを同定した。後者は同期したレビトンをビームスプリッター上で衝突させて実現でき、量子情報にレビトンが利用できる可能性を示している。すなわち、バリスティック導体中で、線形電子量子光学を用いて、飛行するキュービットを操作する姿が想像できる。この操作では、フェルミ統計を利用して、異なるソースから放出される同期した電子の間で量子もつれが形成される。量子ドットを使った電子源と比較して、レビトンの発生は細心の注意を要するナノリソグラフィーを必要とせず、拡張性の面で回路をかなり単純化できる。レビトンは単一電荷を帯びているものに限定されないため、幅広い研究分野において、n粒子レビトンは完全な電子計数統計の研究に応用できるであろう。しかし、レビトンはラッティンジャー液体や分数量子ホールエッジチャネルにおいて実現されれば、分数電荷をも帯びることができる。これによって、時間領域においてアーベル型と非アーベル型の準粒子の研究が可能となる。最後に、ここで用いた生成技術は低温原子ガスに適用可能であり、原子レビトン実現のための可能性原子レビトンを実現する可能性が拓かれる。

