遺伝学:切断により誘発される複製では、移動性の異常なバブル構造が保存的DNA合成を推進する
Nature 502, 7471 doi: 10.1038/nature12584
染色体の二本鎖切断(DSB)の修復は、ゲノムの完全性維持に不可欠である。しかしDSB修復は、発がんや遺伝性疾患の原因となる変異や染色体再編成を引き起こし、ゲノムを不安定化する場合もある。DNA鎖切断により誘発される複製(break-induced replication;BIR)はDSB修復経路の1つであり、遺伝的不安定性の原因になる確率が非常に高い。BIRは、切断末端の1つが相同なDNA塩基配列に侵入することによって始まり、その後複製が起こって、供与側分子のDNA塩基配列を、そのテロメアまで通して、何百キロ塩基対もコピーする。修復されて生じた染色体は、細胞に多大なコストをもたらす。それは、BIRが変異誘発、ヘテロ接合性の消失、転座、コピー数変動などを起こりやすくし、これらは全て発がんによく見られる特徴だからである。BIRは、S期の複製と同じように、既知の最もよく知られた複製タンパク質の多くを使って長いDNAをコピーする。従ってBIRも半保存的複製によって進行するものと考えられてきたが、正常な複製に比較すると変異率が1,000倍も高いといったBIRに関して明らかになっている不安定性は、真正の安定した複製フォークというモデルとは矛盾する。今回我々は、出芽酵母のBIRにおける複製機構がS期の複製とは著しく異なり、異常なバブル状の複製フォークを介して進行し、その結果新しい遺伝物質が保存的に受け継がれることを明らかにする。Pif1ヘリカーゼに依存するこの非典型的な複製様式が、BIRに伴って変異が著しく増加する原因であることを示す証拠が得られた。我々は、BIRのDNA合成様式が、ヒトも含めた真核生物での遺伝的不安定性を急激に上昇させる強力な機構であると考える。

