生化学:専用のポリケチドシンターゼモジュールが触媒するビニログ的分枝鎖形成
Nature 502, 7469 doi: 10.1038/nature12588
細菌は、モジュール型のポリケチドシンターゼ(PKS)を使って複雑なポリケチドを組み立て、その多くは臨床用医薬品、特に抗感染薬や抗腫瘍薬を開発するためのリード化合物となっている。これらの多様な化合物は合成が極めて難しいため、通常は微生物発酵によって生産されている。この20年間に、モジュール型PKSについては多くの目覚ましい知見が集まり、ポリケチドの生合成経路に関して詳しい考察が得られただけでなく、酵素の反応過程を理論に基づいて操作することで構造類似体が得られるようになった。注目したいのは、これまでに研究されたPKSモジュールは全て、アシル単位、マロニル単位を頭尾連結する性質を持つことで、これによって直鎖状の骨格が生じる。しかし、このような同一の結合様式では、構造の多様性が限られてしまう。今回我々は、真菌に内部共生する細菌Burkholderia rhizoxinica由来のPKSモジュールが、アセチル基のマイケル付加を触媒して炭素鎖に分枝を生じさせる新しい種類のものであることを明らかにする。in vitroでのPKSモジュール全体の再構築、ケトシンターゼ分枝ジドメイン(ketosynthase-branching didomain)のX線結晶構造、変異導入実験によって、ケトシンターゼドメインが炭素鎖の分枝に果たしている重要な役割が明らかになった。我々は、アシル担体タンパク質とケトシンターゼが分枝の生じたポリケチドを介して共有結合している反応途中の状態を捕捉して示した。これはテルペノイド様のβ分枝とは機能的に異なった鎖アルキル化の新しい機構であると考えられる。イネ苗立枯病症を引き起こす毒素のrhizoxinは、これまで知られている有糸分裂阻害物質の中で最も強力なものの1つだが、その植物毒性や抗腫瘍活性には、この非古典的なポリケチド修飾が不可欠である。これと近縁のファーマコフォア群の形成は、同じような一般的機構に従っていると考えられ、ケトシンターゼ分枝ドメイン–アシル担体タンパク質という構造を持つPKSモジュールによる統一的なビニログ的分枝反応の存在が考えられる。今回の研究により、ポリケチド生合成の範囲を大きく広げる新しいPKSモジュールの構造と機能が明らかになり、構造的多様性を合理的に作り出すための基盤が整った。

