発生:胚発生における内在性のレチノイン酸勾配の可視化
Nature 496, 7445 doi: 10.1038/nature12037
脊椎動物の発生では、胚を貫く種々の初期モルフォゲン濃度勾配によってボディープランが決定される。レチノイン酸(RA)は重要なモルフォゲンであり、後脳や沿軸中胚葉をはじめとする前後軸構造のパターン形成に関わる。RAは長距離にわたって拡散し、その働きはRAの合成と分解を行う酵素によって空間的に制限されている。しかし、生きた胚に内在するRAモルフォゲン勾配は直接的には観察されておらず、実際、その存在や分布様式、あるいは正確なパターン形成のために必要かどうかについては議論が多い。本研究では、GEPRA(genetically encoded probes for RA)と名付けた、遺伝子にコードされるRA指示薬のファミリーについて報告する。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の原理を用いて、RA受容体のリガンド結合ドメインにシアン蛍光タンパク質と黄色蛍光タンパク質を連結させ、それぞれFRETのドナーとアクセプターとして用いることで、遊離RAを精度よく計測することを目指した。我々はRAに対して異なる親和性を持つ3つのGEPRAを作製し、生理的なRA濃度の定量的測定を行った。原腸胚期および体節形成期のゼブラフィッシュ胚のライブイメージングを行ったところ、内在性RAは直線的な濃度勾配を示し、胚の中心から両端に向かって減少する様式(two-tailed source–sink arrangement)を持つことが明らかとなった。観察されたRAの直線的勾配のモデル化から、RAの拡散が胚発生の時空間的動態を上回って迅速に起こり、その結果、撹乱に対する安定性が生じていることが示唆された。さらに、GEPRAと遺伝学的あるいは薬理学的な撹乱操作を組み合わせて用い、後脳形成および体節形成におけるRA濃度勾配の様式に関する論争を解決することができた。胚発生全体を通しての内在性RA濃度勾配のライブイメージングは、発生動態の分子機構の正確な指定を明らかにすることを可能にし、モルフォゲン勾配に基づいた研究の組織工学や再生医学への適用を加速するだろう。

