細胞:プロスタグランジンE2による、幹細胞と前駆細胞でそれぞれ異なる輸送
Nature 495, 7441 doi: 10.1038/nature11929
一生を通じて血球の産生を維持するために、造血幹細胞(HSC)は、内在性のプログラムと微小環境ニッチから受ける外因性の調節シグナルによって厳密に調節されている。長期造血再構築能を持つHSCは、おそらく重複している複数のニッチに存在し、恒常性維持、ストレスや外傷後に増加した産生に必須の調節分子やシグナルを作り出す。HSCとニッチの相互作用を支配している特異的な細胞機構や分子機構については研究にかなりの進展が見られるものの、無傷の哺乳類造血ニッチで働く調節機能についてはよくわかっていない。最近、我々および他の研究グループによって、ex vivoでHSCの機能に対してプロスタグランジンE2(PGE2)がもたらす正の調節作用が報告された。本研究では、マウスでの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)投与による内在性PGE2の阻害が、骨髄からのHSCの中程度の放出を起こすことを示す。意外にも、これは、幹細胞の移動に関わると考えられているSDF-1–CXCR4軸とは無関係であった。幹細胞と前駆細胞とでは放出機構が異なることがわかった。すなわち、HSCの末梢への移行は、ニッチの減衰、およびニッチ保持に関わる分子であるオステオポンチンの減少に依存している。NSAIDにより動員された造血移植細胞は、優れた生着能と長期生着性を持っていた。非ヒト霊長類や、健常なヒト・ボランティアでの投与実験からは、他の生物種でもNSAIDによる放出が起こることが確認された。PGE2受容体ノックアウトマウスでは、前駆細胞の増加と、幹/前駆細胞の放出が見られ、これはE-プロスタノイド4(EP4)受容体シグナル伝達の減弱の結果であることがわかった。以上の結果は、ニッチでのHSC保持に関わるEP4シグナル伝達の独自な調節作用を明らかにしただけでなく、臨床移植療法を改善するための速やかに臨床応用が可能と思われる戦略を示している。

