生化学:メタンモノオキシゲナーゼの活性部位への基質接近の制御
Nature 494, 7437 doi: 10.1038/nature11880
メタン酸化菌は主要な炭素源としてメタンを消費しており、温室効果ガスであるメタンの大気中への放出を制限する働きにより、全球的な炭素循環に重要な役割を担っている。メタン酸化菌は、可溶性および微粒子状のメタンモノオキシゲナーゼ(MMO)によって、メタンをメタノールへと酸化する。可溶性MMOには、251キロダルトンのヒドロキシラーゼ(MMOH)、38.6キロダルトンのレダクターゼ(MMOR)、15.9キロダルトンの調節タンパク質(MMOB)という3種類のタンパク質成分が1つずつ含まれ、MMOHの二核鉄活性中心での基質ヒドロキシル化と電子の消費を共役させるのには、これらが必要である。しかし、MMOH–MMOB(以下H–Bとする)複合体に関する原子レベルの情報がないため、MMOBの役割ははっきりしていなかった。今回我々は、この情報欠落を解消すべく、H–B複合体の結晶構造を解明した。この結晶構造から、活性部位に基質が接近するために不可欠なMMOH中残基のコンホメーションをMMOBが制御する仕組みが明らかになった。MMOBは、α2β2γ2という構造を持つMMOHのα2β2接触面に結合し、同時にαサブユニットのコンホメーション変化を引き起こす。この変化は二核鉄活性中心への酸素とメタンの接近やプロトン供給を調整している。二核鉄活性部位に至る基質の通路が、MMOBによってこのように綿密な調節を受けていなければ、MMOはモノオキシゲナーゼとしてではなく、NADHオキシダーゼとして作用してしまうだろう。小型の基質がかかわる生物学反応の触媒作用は、自然界では大型のタンパク質やタンパク質複合体によって行われることが多い。今回報告された構造は、この原理を的確に示す一例である。

