構造生物学:ブルーストリパノソーマ・リボソームの低温電子顕微鏡による高分解能構造
Nature 494, 7437 doi: 10.1038/nature11872
生細胞のタンパク質製造工場であるリボソームは、メッセンジャーRNAにより運ばれる遺伝情報をタンパク質に翻訳する。したがって、リポソームは細胞の発生や維持の実質上すべての面に関与していると言える。真核細胞リボソームは、それについて得られている数少ない構造から、原核生物リボソームより複雑であることがわかっており、それは主に真核細胞特異的なリボソームタンパク質や、リボソームへのES(expansion segment)と呼ばれている余分なRNA挿入配列によるものである。リボソームの構造は種によっても異なっていて、その一因はこのようなESの大きさや配置にある。こうした差異は、ヒトに感染することの多い単細胞真核寄生生物であるキネトプラスト類ではなはだしい。今回我々は、ツェツェバエにより伝搬されてアフリカ睡眠病を引き起こすブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)のリボソームの高分解能での低温電子顕微鏡構造を示す。原子モデルによって、このリボソームの独自の特徴が明らかになった。それは主に、異例な大きさのESの存在とリボソームタンパク質の伸長によるもので、これらによってさらに4つのサブユニット間架橋が追加形成されている。また、ほかの真核生物では見つかっていない大型のrRNAドメイン1個を含む、rRNA挿入が追加されていることもわかった。この構造からはまた、キネトプラスト類のリボソーム大サブユニット(LSU)rRNA鎖(6つの断片に切断されるという独自の性質が知られている)の5つの切断部位が明らかになった。この切断はブルーストリパノソーマ・リボソームをここで観察された構造に維持するのに重要であると考えられる。我々は、大きなrRNA ESの翻訳調節過程へ及ぼすと考えられるいくつかの影響についても検討を行っている。今回の構造は、キネトプラスト類に特有のリボソームのこのような特徴がタンパク質翻訳調節に持つ機能的重要性の解明をめざすさらなる実験の基盤となると考えられる。こうした問題の解明は、キネトプラスト類に対して特異的に働く、有効で安全な薬物開発への重要な段階である。

