構造生物学:ヒト基本転写因子TFIIDコア複合体の構造
Nature 493, 7434 doi: 10.1038/nature11791
RNAポリメラーゼIIによる遺伝子転写の開始は、ヒト細胞では非常に多くのタンパク質により調節されている。遺伝子プロモーターに最初に結合する基本転写因子は、転写因子IID(TFIID)である。TFIIDは、転写開始前複合体の形成を引き起こし、転写活性化因子と相互作用することでコアクチベーターとして機能し、エピジェネティック・マークを読み取る。TFIIDは、TATAボックス結合タンパク質(TBP)と13のTBP随伴因子(TAF)からなるメガダルトン規模の多タンパク質複合体である。その重要な役割にもかかわらず、TFIIDの詳細な構造や集合機構はよくわかっていない。TAFにはヒストンフォールドドメインが広く存在し、TFIIDにはヒストン様四量体あるいは八量体構造が存在すると考えられている。ショウジョウバエ(Drosophila)の核では、TAFの一部(TAF4、TAF5、TAF6、TAF9とTAF12)からなり、機能を備えたコアTFIIDサブ複合体が明らかにされている。これらのコアサブユニットは、ホロTFIID中に2つずつ存在すると考えられており、1つしか存在しないTBPやほかのTAFとは対照的であって、TFIIDの集合経路が対称的なものから非対称的なものへ変わっていったことを示唆している。本論文では、低温電子顕微鏡を使い、11.6 Åの分解能で決定した、ヒトのコアTFIIDの構造を示す。この構造によって、顕著な突起がある、二回対称性の絡み合った構造が明らかになった。この構造はヒストンフォールドなどのTAFの保存された構造的特徴のすべてに適合している。さらに、1つのTAF8–TAF10複合体の結合が、コアTFIIDが本来備えていた対称性を破ることがわかった。その結果として得られる非対称な構造が機能的足場としての役目を果たし、そこに残りのTAFとTBPがそれぞれ1つずつ付加されて、ホロTFIID構造の核が形成されると我々は考える。

