構造生物学:インスリンがその受容体の主要結合部位に結合する仕組み
Nature 493, 7431 doi: 10.1038/nature11781
インスリン受容体からのシグナル伝達は哺乳類の生物学的性質、すなわち細胞の代謝、増殖、分裂、分化、生存の調節に重要な役割を担っている。インスリン抵抗性はII型糖尿病の病因やアルツハイマー病の発症にかかわりがある。このシグナル伝達の異常は多様ながんで見られ、相同性のあるインスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)とのクロストークにより、さらに増幅される。30年以上の研究にもかかわらず、インスリン–インスリン受容体複合体の三次元構造は、受容体タンパク質の作製が複雑なために解明されていない。今回我々は、インスリン受容体の主要結合部位とインスリンとの相互作用を、我々の知るかぎりで初めて明らかにした。これは、インスリン受容体の短縮型構築体に結合したインスリンの4種類の結晶構造に基づくものである。インスリン受容体の1つ目のロイシンリッチリピートドメイン(L1)とインスリンの間の直接的な相互作用は少ないことがわかった。インスリンは、インスリン受容体のカルボキシ末端のα鎖(αCT)セグメントと結合している。インスリンが結合すると、L1の表面上でこのαCTセグメントの形が変わる。インスリンとL1ドメインとの接触はインスリンB鎖の残基に限られている。αCTセグメントがインスリンB鎖C末端のβストランドを、インスリンの中心部から引き離し、以前から考えられていた、受容体の結合に応じたインスリンのコンホメーション変化の機序がこれによって明らかになった。ホルモンと受容体の間に見られるこのような認識方法は、チロシンキナーゼ受容体の広範なファミリー内で初めて見られるものである。これらの知見は、ここで示唆したような結合を光による架橋でホロ受容体内に形成させたデータや、インスリン–インスリン受容体結合面の等温滴定熱測定データからも裏付けられた。これらを総合すると、今回の知見は、インスリン受容体系やIGF1R系からこれまでに得られた多くの生化学データに対する説明となり、治療用インスリン類似体の設計に役立つだろう。

