構造生物学:胃内病原菌であるピロリ菌由来のプロトン感受性尿素チャネルの構造
Nature 493, 7431 doi: 10.1038/nature11684
胃炎と胃潰瘍を引き起こし、胃腺がんの発生率を上昇させるピロリ菌(Helicobacter pylori)には、世界人口のほぼ半分が慢性感染している。ピロリ菌の内膜にあるプロトン感受性尿素チャネルHpUreIは、胃の酸性環境内での生存に必須である。このチャネルは中性pHで閉じ、酸性pHで開いて、尿素が細胞質内にあるウレアーゼに速やかに接近できるようにしている。ウレアーゼは、アンモニアと二酸化炭素を生成して流入するプロトンを中和し、それによって緩衝作用を発揮してpH 2.0以下の胃液中でも、ペリプラズムのpHを約6.1に維持している。今回我々は、HpUreIの構造を報告する。これによって、規則正しく並んだ脂質からなる中央の二重層の栓を取り囲む輪状の六量体を形成している6個のプロトマーが明らかになった。各プロトマーが、6本の膜貫通ヘリックスのねじれた束(バンドル)により形成されたチャネルを取り囲んでいる。バンドルは、前例のない折りたたみが特徴で、チャネルの中央軸の周りで3回繰り返される2ヘリックス・ヘアピンモチーフから構成され、哺乳類型の尿素輸送体で見られる逆方向反復はない。チャネル界面とプロトマー界面の両方が、AmiS/UreIスーパーファミリーでは保存されている残基を含んでおり、このスーパーファミリーでのチャネル構造とオリゴマー状態は保存されていると考えられる。大半が芳香族または脂肪族の側鎖がチャネルの内表面全体を覆っており、チャネルの中程の2つの連続した狭窄部位の輪郭をはっきりさせている。細胞質側の狭窄部位にあるTrp153をAlaまたはPheに変異させると、チオ尿素に対する尿素の選択性が低下するので、Trp153と溶質との相互作用が選択性の一要因となっていると考えられる。今回報告した、以前に見られたことのない六量体チャネル構造から、原核生物と古細菌での尿素などの小型アミド溶質の透過に関する新しいモデルが得られる。

