医学:COUP-TFIIはTGF-βによる腫瘍障壁を阻害して前立腺がん発生を促進する
Nature 493, 7431 doi: 10.1038/nature11674
PTEN(phosphatase and tensin homologue)の変異や、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼシグナル伝達経路のゲノム変化は、ヒトの前立腺がんで最も多く報告されている遺伝的変化である。しかし、PTEN変異を持つ不活性腫瘍が転移能を獲得する詳細な仕組みについては、まだよくわかっていない。最近の研究で、PTENの欠失により引き起こされたトランスフォーミング増殖因子(TGF)-βシグナル伝達の上方制御が腫瘍障壁を形成し、これが防御機構として前立腺がんの進行を抑制することが示唆された。このことから、TGF-βシグナル伝達が浸潤前チェックポイントとなり、PTENを介した前立腺がん発生を防いでいる可能性が強調された。本研究では、核内受容体スーパーファミリーの1つであるCOUP転写因子II(COUP-TFII、別名NR2F2)が主要な制御因子として働いてSMAD4依存的転写を抑制し、その結果、PTENヌル不活性腫瘍に対するTGF-β依存的チェックポイントを無効化することを示す。マウス前立腺上皮におけるCOUP-TFIIの過剰発現は、PTENの欠失と協調して悪性進行を増強し、強転移性の腫瘍を生じさせるCOUP-TFIIとSMAD4の間での機能的な拮抗作用は、SMAD4を条件的に欠失させた遺伝子改変マウスモデルでCOUP-TFIIの欠失により引き起こされる抑制作用が消失するという事実によって裏付けられる。前立腺がん発生におけるCOUP-TFIIの生物学的重要性は、患者試料の解析から実証されており、COUP-TFIIの発現や活性は腫瘍の再発や進行と強く関連している一方、TGF-βシグナル伝達とは逆相関していた。以上により、COUP-TFIIによるTGF-β依存的な障壁の破壊が、PTEN変異の前立腺がんの生命を脅かす悪性化にとって重要であり、COUP-TFIIが転移性ヒト前立腺がん治療における創薬標的候補となることを示している。

