生化学:リン脂質二重層中にあるケモカイン受容体CXCR1の構造
Nature 491, 7426 doi: 10.1038/nature11580
CXCケモカインであるインターロイキン8(IL-8)は免疫や炎症反応の主要なメディエーターで、腫瘍増殖などの多数の疾患に関与している。CXCR1は、IL-8の2つある高親和性受容体のうちの1つである。炎症性刺激に反応して放出されたIL-8は、CXCR1の細胞外領域に結合する。CXCR1のリガンドにより活性化された細胞内シグナル伝達経路により、炎症部位への好中球遊走が引き起こされる。CXCR1は細胞シグナル伝達にかかわっていて、薬剤受容体として標的となる膜内在タンパク質の最も大きな分類群であるクラスAに属するロドプシン様のGタンパク質共役受容体(GPCR)である。CXCR1を介するシグナル伝達の分子機構は、その重要性にもかかわらず不明なところが多いが、それは利用可能な構造情報が限られているためである。最近のGPCRの構造決定では、安定化変異やT4リゾチームタンパク質の挿入、アミノ酸配列の短縮などによる受容体の改変に加えて、安定化抗体の使用や立方相モノオレイン混合物に結晶化を促進する小分子を加えるという方法により進展が見られている。GPCRの細胞内ループはGタンパク質との相互作用に必須で、CXCR1の活性化にはアミノ末端残基と細胞外ループの両方が関与している。我々が以前に行った核磁気共鳴研究により、N末端残基へのIL-8の結合に膜がかかわっていることが示唆され、生理的活性に対するリン脂質二重層の重要性が裏付けられている。今回我々は、ヒトCXCR1のNMR分光法により決定された三次元構造を報告する。受容体は、アミノ酸配列の変更をせずに生理的な条件下で液晶リン脂質二重層中に置かれている。この構造から、細胞内Gタンパク質活性化やシグナル伝達に重要な特徴が明らかになった。脂質二重層中にあるヒトCXCR1の構造は、GPCRと相互作用する新規化合物の発見を促進し、乳がんのような疾病と闘うのに役立つと考えられる。

