Letter

物理:電気的に捕獲した多原子分子のシジフォス冷却

Nature 491, 7425 doi: 10.1038/nature11595

極性分子は、豊富な内部構造と双極子–双極子間の長距離相互作用を持ち、量子的に制御された応用分野や基礎科学の探究に有用である。それらの可能性は極低温で大きく花開くが、極低温では多体物理、量子情報科学、極低温化学、そして標準的なモデルを超えた物理といった分野でさまざまな効果が予言されている。これまで、低温分子集団を生成するためにさまざまな方法が開発されているが、多原子分子(すなわち、3個以上の原子を持つ分子)を極低温まで冷却するのはいまだ難しい課題であるように思われる。本論文では、最近提案された極性分子の冷却・蓄積法である光電冷却(optoelectrical cooling)を実験的に実現した結果を報告する。その重要な特性は、シジフォス効果を通して各冷却サイクルで分子の運動エネルギーの大部分を除去することである。この方法では、散逸的な減衰過程をほんの数回繰り返すことで分子を冷却できる。我々は、約100万個のCH3F分子の温度を13.5分の1に下げることで光電冷却の可能性を実証した。位相空間密度は29倍(あるいはトラップ損失を除くと70倍)に増大した。ほかの冷却機構とは対照的に、我々の手法はトラップ中で進行し、三次元すべての方向で冷却が進み、多種多様な極性分子でうまく働くはずである。冷却温度の原理的限界は、ナノケルビン領域に位置する光子反跳温度まで存在しないと期待されるため、我々の方法で極低温の多原子分子を生成できると予想される。低温、多数の分子、最長27秒と長い捕獲時間が実現できていることから、本手法で相互作用が支配的になる領域を実現できるはずである。そのため、本手法を用いて衝突の研究や、多原子分子を用いたボース・アインシュタイン凝縮に向けた蒸発冷却の研究が可能となるであろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度