Letter
気候:熱帯インド太平洋の温暖化によって引き起こされるウォーカー循環の減退
Nature 491, 7424 doi: 10.1038/nature11576
全球平均の海面水温(SST)は20世紀において徐々に上昇してきたが、その全体的なパターンは、不確実なことが多い広範囲にわたる空間変動を含み、局地的な降水に大きな影響を及ぼす可能性がある。観測結果から、熱帯の太平洋上の東西方向の大気の鉛直循環(ウォーカー循環)が20世紀において減退したことが示唆されている。この変化は地球温暖化によって引き起こされる水循環の弱まりによるとされてきたが、SSTの温暖化パターンの影響の調査や定量化は行われていない。今回我々は、大気モデルを用いて実験を行い、SSTの温暖化パターンが、過去60年間(1950〜2009年)のウォーカー循環の弱まりの主たる原因であることを見いだしている。バケツで採取されたSSTと夜間の海面気温から復元されたSSTの変化傾向は、熱帯のインド太平洋の東西方向の勾配が弱まっていることを特徴とし、この変化は表層水温の観測結果と一致する。この変化傾向のパターンを用いたモデル実験は、ウォーカー循環の減退、インドネシア海洋大陸から中部熱帯太平洋への東方向への大気の対流の移動を含む観測された変化を、ロバストにシミュレートしている。今回の結果は、観測された変化が自然変動によるものか人為起源の地球温暖化によるものかを確定することはできないが、観測されたウォーカー循環の減退は、大気過程ではなく、海洋過程によって引き起こされている可能性が高いことを示している。

