生化学:ミトコンドリアのII型NADHデヒドロゲナーゼの構造に関する考察
Nature 491, 7424 doi: 10.1038/nature11541
単一成分からなるII型NADHデヒドロゲナーゼ(NDH-2)は、多数のサブユニットからなる呼吸鎖複合体I[I型NADHデヒドロゲナーゼ(NDH-1)、別名NADH:ユビキノンオキシドレダクターゼ]が働かない場合に、ミトコンドリアの呼吸鎖でのNADHからユビキノンへの電子伝達を触媒することができる。酵母のNDH-2(Ndi1)はマトリックス側でNADHを酸化しユビキノンを還元して、ミトコンドリアでのNADH/NAD+の恒常性を維持する。呼吸鎖複合体Iに異常のある動物でNdi1を発現させるとミトコンドリアの活性が回復することから、Ndi1は、複合体Iの異常が原因で起こるヒトの病気、特にパーキンソン病の治療薬になる可能性がある。また、病原性微生物のNDH-2は、新しい抗生物質の標的になる可能性がある。今回我々は、基質が結合していない状態、NADHあるいはユビキノンが結合した状態、およびNADH–ユビキノンと結合した状態のNdi1の結晶構造を解き、NDH-2の触媒機構の解明を試みた。Ndi1の触媒活性と膜への移行には、カルボキシ末端ドメインを介したホモ二量体形成が不可欠であることがわかった。また、これらの構造から、Ndi1には2つのユビキノン結合部位(UQI、UQII)があることが明らかになった。NADHとUQIは同時にNdi1に結合して、基質–タンパク質複合体を形成する。UQIはFADと相互作用して電子伝達の中間体として働き、NADHはこのFAD–UQI複合体を通してUQIIへと電子を伝達すると我々は考える。これらのデータはNdi1の調節機構、触媒機構を明らかにしており、NDH-2を標的とする治療応用の研究、開発を促進する可能性がある。

