細胞:真核細胞におけるカルシウム制御のバイモジュラー機構
Nature 491, 7424 doi: 10.1038/nature11539
カルシウムイオン(Ca2+)は数多くのシグナル伝達過程でセカンドメッセンジャーとして重要な役割を果たしており、細胞はCa2+の細胞内濃度(〜0.1 μM)と細胞外濃度(〜2 mM)の間の急な勾配を制御・維持するのに多くのエネルギーを使っている。真核細胞では、細胞膜Ca2+-ATPase(PMCA)などのカルモジュリン活性化カルシウムポンプは、細胞内Ca2+の重要な調節因子である。PMCAはアミノ末端およびカルボキシ末端に独特な調節ドメインを持ち、これらは自己阻害にかかわっている。カルシウムを結合したカルモジュリンがこのドメインに結合すると、このドメインの自己阻害が解除され、ポンプが活性化する。しかし、活性化機構の構造基盤は不明である。またカルモジュリンによるPMCA調節が、ナノモル濃度範囲にある基底状態のCa2+濃度と、細胞刺激によって生じるマイクロモル濃度範囲のCa2+トランジエント(カルシウム濃度変化)の両方に対処可能となる仕組みは重要な疑問であり、まだ解決されていない。今回我々は、PMCA調節ドメイン/カルモジュリン複合体の高分解能での結晶構造の決定と、in vivoでの特性検討および生化学、生物物理学およびバイオインフォマティクスのデータを組み合わせた統合的研究によって、カルシウム結合型カルモジュリンによって行われる2段階からなるPMCA活性化機構についての手がかりが得られたことを報告する。構造研究によってPMCA調節ドメイン全体の構造が明らかになり、2つのカルシウム結合型カルモジュリン分子が長いヘリックス上の異なる部位にそれぞれ結合しているという、2:1という意外な量的関係が明らかになった。これら2つの部位の両方について、その役割が多面的に調べられ、カルモジュリンが介在するPMCA調節の一般的な構造モデルが得られた。このモデルでは、真核細胞の細胞内カルシウム濃度の厳密で高い応答性を示す制御が可能で、急激な活性化が起こる閾値に当たるCa2+濃度で、安定な基底レベルを維持することができる。

