医学:局所的な記憶T細胞の定着によって性器ヘルペスを防御するというワクチン戦略
Nature 491, 7424 doi: 10.1038/nature11522
既存のワクチンで成功しているもののほとんどは中和抗体に依存しており、B細胞が特定の解剖学的部位に局在する必要はないだろうと考えられている。しかしながら、防御をT細胞に依存する有効なワクチンは、ロバストな全身性記憶T細胞応答が宿主の防御と必ずしも相関せず、そのために開発が困難になっている。末梢部位では、組織常在型の記憶T細胞が、循環中の記憶T細胞に比べてより優れた防御力を発揮する。本論文では、末梢組織内で防御に働く記憶T細胞プールの樹立を可能にする単純で非炎症性のワクチン戦略について述べる。性感染症の進入路である女性生殖器は、炎症や感染がない状態では活性化T細胞の侵入が防止されている免疫学的に限定された組織である。こうした障害を乗り越えるために、我々は「prime and pull(準備と動員)」と名付けたワクチン戦略を開発した。これはウイルスに暴露されると考えられる部位に局所的な組織常在型記憶T細胞を定着させるというものである。この方法は2つの段階によっており、まず従来どおりの非経口ワクチン接種によって全身性のT細胞応答を惹起し(prime)、それに続いて、ケモカインを局所塗布することで活性化T細胞を生殖器限定的に動員する(pull)。こうしたT細胞は生殖器中で長期にわたってニッチを構築し、防御免疫を媒介する。マウスでは、このprime and pull方式によって感染性単純ヘルペス2型の感覚神経への広がりが減少し、臨床疾患の発症が防止される。これらの結果は、単純ヘルペス2型に対する有望なワクチン戦略を明らかにしており、この方法はヒト免疫不全ウイルスなどのほかの性感染症に対しても有効と考えられる。

