医学:HIV感染T細胞はウイルス伝播のための移動性媒体である
Nature 490, 7419 doi: 10.1038/nature11398
ヒト免疫不全ウイルス-1(HIV-1)は、粘膜表面から宿主へ侵入した後、リンパ組織に広がって免疫系全体に感染する。このウイルスが、感染初期の間は局所的に、そしてそれに続く伝播の間には全身的に、許容状態の標的細胞に広がる機序はわかっていない。in vitroでの研究からは、感染T細胞と非感染T細胞とが安定に接触している間に形成されるウイルスシナプスが、ウイルス移動の効率を大幅に上昇させることが示唆されている。しかし、上皮やリンパ組織では細胞が常時運動しており、そのような条件下でのT細胞の接触がin vivoで十分安定で、機能的なシナプス形成が可能であるかどうかは明らかになっていない。今回我々は、多光子生体顕微鏡法を用いて、ヒト化マウスのリンパ節内でのHIV感染T細胞の動的挙動を調べた。増殖性の感染T細胞のほとんどが盛んに移動しており、その結果リンパ節皮質の全体にわたって均一に分布するようになることがわかった。一部の感染細胞は、HIVエンベロープに依存する細胞融合を介して多核合胞体を形成した。合胞体のまとまりのない動き方とCD4+リンパ節細胞への接着の両方によって、長く伸びてつながったひも状の膜構造が形成され、細胞長は最大で運動性非感染T細胞の10倍にまで伸長した。リンパ節から輸出リンパ管への移動性T細胞の排出を阻害してT細胞の再循環を妨げるとHIVの伝播が制限され、血漿ウイルス血症が強く抑制された。このように、HIV感染T細胞は運動性であり、合胞体を形成し、また細胞を連結するような相互作用を確立して、それがウイルスシナプスを介した細胞間伝達を促進する可能性が明らかになった。したがって、リンパ節におけるT細胞の遊走は局所的な感染を広げ、その一方で組織を経由するその再循環は効率的なウイルスの全身への効率よい拡散に重要である。この知見は、HIV感染に拮抗するための新たな分子標的を示唆している。

