免疫:妊娠は胎児の抗原に対してアネルギーを維持する制御性記憶を刷り込む
Nature 490, 7418 doi: 10.1038/nature11462
妊娠は複雑に調整された過程であり、胎児に特異性を持つ免疫エフェクター細胞は選択的にサイレンシングされる。これには免疫抑制的に働く母親由来のFOXP3+制御性T細胞(Treg細胞)の持続的な増殖が必要だが、それはこうした細胞の一時的で部分的な欠損でさえ、胎児特異的エフェクターT細胞の活性化と妊娠喪失を誘導するからである。さらに、胎児寛容の障害から生じると考えられる特発性の妊娠合併症の多くは、母親由来Treg細胞の増殖鈍化と関連している。重要なことだが、妊娠中に蓄積する母親由来Treg細胞の抗原特異性と細胞起源は完全には明らかになっていない。今回我々は、妊娠によって、胎児特異性を持つ母親由来FOXP3+ CD4細胞の蓄積が選択的に刺激されることを、まれな内在性T細胞の同定を可能にする四量体を用いた濃縮法を使って明らかにする。注目すべきことに、出産後、胎児特異的Treg細胞は高いレベルを保ち、既存の胎児抗原に対して寛容を維持し、次回の妊娠時には迅速に再蓄積される。2度目の妊娠時のTreg細胞増殖が加速するのは、前回の妊娠時から維持されてきた胎児特異的FOXP3+細胞の増殖にほぼ全面的によっているが、最初の妊娠時のTreg増殖には、FOXP3の発現誘導と既存のFOXP3+細胞の増殖が共に関与している。さらに、2回目の妊娠時の胎児吸収は、初回の妊娠時に比べて母親由来のFOXP3+細胞の部分的除去に対してより高い抵抗性を示す。したがって、妊娠は、胎児抗原に対する防御的な制御性記憶をFOXP3+ CD4細胞に刷り込む。我々は、これらの知見が母親由来制御性T細胞の特異性に関するさらなる研究のきっかけとなり、妊娠の転帰を改善する新たな方法、およびTreg細胞記憶を治療に用いる新しい手法への道を開くと考えている。

