Letter
発生:トゲマウス(Acomys)の皮膚の脱落と組織再生
Nature 489, 7417 doi: 10.1038/nature11499
動物では、捕食から逃れるためにさまざまな防御形質が進化によって生み出されており、その中には、捕捉されても体の一部を自己切断して逃れる能力などがある。自切した後、失われた部分は、再生して元に戻ることもあれば(例えば、有尾類、トカゲ類、節足動物、甲殻類など)、永久に失われることもある(哺乳類など)。ほとんどの自切では付属器官(脚、鋏脚、触角、尾など)が失われるが、特定の種類のトカゲやヤモリでは、皮膚の自己脱落が起こる。今回我々は、哺乳類としては初めての皮膚自己脱落例を、トゲマウス(Acomys、別名アフリカトゲネズミ)で明らかにする。機械的検査により、非常に低い張力の下でも皮膚が剥ぎ取られやすいこと、破断面がないことがわかった。背中の皮膚の傷では、皮膚が失われた後で、傷口が急速に収縮し、続いて毛包の再生が起こった。特に目立つのは、トゲマウスの再生能力が耳孔にまで及び、毛包、皮脂腺、真皮、軟骨が完全に再生されたことである。肢の再生能力を持つサンショウウオは、肢を失った後、再生芽(系譜が限定された前駆細胞塊)を形成するが、今回の知見から、トゲマウスの耳組織の再生が進む際にも、同様な構造の集合体が形成される可能性が示唆される。この研究によって、従来のモデル生物以外でも再生現象を調べることの重要性が強調され、哺乳類がこれまで考えられていたよりも高い再生能力を保持していることが示唆される。再生医学分野では、哺乳類の組織再生を制御する分子経路の探索への関心が再び高まっており、トゲマウスは、線維化や瘢痕化の代わりに再生を促す仕組みを同定するのに役立つかもしれない。

