Letter
量子情報科学:シリコンにおける単一原子電子スピンキュービット
Nature 489, 7417 doi: 10.1038/nature11449
単一原子は原型となる量子系であり、量子コンピューターの基本単位である量子ビット、つまりキュービットの無理のない候補である。原子を用いた量子情報の記憶と処理は、電磁トラップや、窒素空孔中心の点欠陥を用いてダイヤモンドで成功している。固体の電気デバイスには、このような数個のキュービットの制御を、大規模な量子プロセッサーまでスケールアップできる大きな可能性がある。スピンキュービットのコヒーレント制御は、GaAsとSiの両方でリソグラフィーにより形成した二重量子ドットにおいて実現されている。しかし、工学的に作製したナノ構造体の電気測定が行えることと、原子スピンキュービットに固有の利点を組み合せることは困難な課題である。本論文では、天然シリコン中のリンのドナー原子に束縛された1個1個の電子スピンキュービットのコヒーレントな操作を実証し、シングルショットの読み出しを通して電気的に測定している。電子スピン共鳴を用いてラビ振動を駆動し、ハーンエコーのパルス列から、200 μsを超えるスピンコヒーレンス時間が明らかになっている。この時間は同位体濃縮した28Si試料ではさらに長くなるはずである。最新の集積回路技術と互換性があるデバイスアーキテクチャーと組み合せれば、シリコン中の単一リン原子の電子スピンは、スケーラブルな量子コンピューターを構築する優れた基盤になると思われる。

