細胞:内因性アルデヒド類がマウス造血幹細胞機能に与える遺伝毒性の帰結
Nature 489, 7417 doi: 10.1038/nature11368
造血幹細胞(HSC)は、生物の一生を通じて血液細胞を産生する。HSCの機能的な質は加齢に伴って低下するが、その一因は損傷を受けたDNAの蓄積である。しかし、DNAに損傷を与える因子やHSCで機能する防御機構についてはあまりよく解明されていない。最近、我々は、ファンコニ貧血DNA修復経路が反応性アルデヒド類の遺伝毒性作用を減弱するように働くことを明らかにした。アルデヒド異化の不活性化(Aldh2ノックアウトによる)とファンコニ貧血DNA修復経路の不活性化(Fancd2ノックアウト)が同時に起こっているマウスは、発育障害や、白血病罹患傾向を示し、また、アセトアルデヒドの外部からの供給源であるエタノールの毒性作用に感受性を示す。今回我々は、老齢で白血病を発症しないAldh2−/− Fancd2−/−変異マウスでは、造血幹・前駆細胞(HSPC)プール内に損傷DNAが蓄積するのと同時に、再生不良性貧血を自発的に発症することを報告する。予想外のことだが、HSPCのみがアセトアルデヒドの毒性の防御にAldh2を必要とし、より成熟した血液前駆細胞はAldh2を必要としないことがわかった。 さらに、Aldefluor染色による測定では、HSPCのアルデヒド酸化活性はAldh2に依存しており、この防御作用と相関している。また、ファンコニ貧血経路を介するDNA修復およびアセトアルデヒド解毒の両方を欠損するマウスのHSCプールは、600分の1以下に低下している。したがって、ファンコニ貧血における骨髄機能不全の出現は、おそらく、アルデヒドを介するHSPCプールに限定された遺伝毒性が原因であろう。これらの知見は、HSCにおける内因性の反応性代謝産物とDNA損傷の間の今まで知られていなかった連関を明らかにし、またこのような脅威に対する防御機構を示している。

