Letter 構造生物学:III型分泌装置ニードルの原子モデル 2012年6月14日 Nature 486, 7402 doi: 10.1038/nature11079 III型分泌装置(T3SS)を用いて宿主細胞の操作を行う病原性細菌は、細菌性赤痢や腸チフス、出血性大腸炎、腺ペストなどの多岐にわたる感染を引き起こす。T3SSに不可欠な部分は、中が空洞となっているニードル(針)のようなタンパク質繊維で、これを通してエフェクタータンパク質が宿主真核細胞に注入される。現在、ニードルの三次元構造は知られていないが、それはニードルが本来的に持つ非結晶性や不溶性の結果としてX線結晶学や溶液NMRで扱えないからである。低温電子顕微鏡法と結晶NMRや溶液NMRから得られるサブユニット構造との組み合わせは最近、超分子集合体を研究する強力なハイブリッド手法となっており、低分解能や中分解能のモデルがこれによって得られている。しかし、このような手法では、原子レベルでの詳細な構造、特に非常に重要なサブユニット–サブユニット界面の構造が得られないが、それはこうした研究では低温電子顕微鏡の分解能に限界があるためである。今回我々は、組み換え野生型ニードルの作製、固体NMR、電子顕微鏡、およびRosettaモデリングを組み合わせるというまた別の手法によって、まず超分子の界面を明らかにし、最終的にはSalmonella typhimuriumのT3SSニードルの完全な原子構造を明らかにしたことを報告する。ニードルでは、S. typhimuriumの鞭毛繊維の組み立てと同様に、80残基からなるサブユニットが右巻きらせん集合体を形成しており、らせん2回転分がほぼ11サブユニットに当たることがわかった。ニードルについての確立されたモデルでは、タンパク質サブユニットのアミノ末端がαへリックスを成していて、ニードル内部に位置すると考えられているが、我々のモデルはこれとは対照的に、ニードルの表面に位置する長く伸びたアミノ末端ドメインを明らかにしており、その一方でよく保存されたカルボキシ末端が内腔のほうを向いている。 Full Text PDF 目次へ戻る