Article 医学:心臓の血管新生の不均衡は周産期心筋症につながる 2012年5月17日 Nature 485, 7398 doi: 10.1038/nature11040 周産期心筋症(PPCM)は、出産間近の妊婦で発症し、命にかかわることも多く、妊娠高血圧腎症(子癇前症)や多胎妊娠の妊婦では発症頻度が高くなる。PPCMについては、その病因も、妊娠高血圧腎症に付随して見られる理由も不明である。今回我々は、PPCMが妊娠高血圧腎症で顕著に見られる全身性の血管新生の不均衡と関係していることを明らかにする。血管新生の重要な調節因子の1つである心臓PGC-1αを欠失するマウスは、重度のPPCMを発症する。注目すべきは、血管新生を促進する治療によって、PPCMが完全に救済される点である。ヒトでは、妊娠後期の胎盤から可溶性FLT1(sFLT1)などのVEGF阻害物質が分泌され、多胎妊娠や妊娠高血圧腎症ではこれが顕著である。このような抗血管新生環境には無症候性の心機能障害が伴い、その程度はsFLT1の血中濃度と相関する。外因性のsFLT1は単独で野生型マウスに拡張機能障害を引き起こし、心臓PGC-1α欠失マウスでは重度の収縮機能障害が起こる。また、PPCMの女性から得た血漿試料には異常に高濃度のsFLT1が含まれていた。これらのデータは、PPCMが本質的に血管系疾患であり、周産期の過剰な抗血管新生シグナル伝達によって起こることを示している。またこれらのデータから、妊娠後期の状態が心臓の恒常性を脅かす仕組みや、妊娠高血圧腎症および多胎妊娠がPPCM発症の重要なリスク因子になる理由も説明される。 Full Text PDF 目次へ戻る