Letter

地球:溶けた永久凍土からの炭素の大量放出と関連した過去の極端な温暖化事象

Nature 484, 7392 doi: 10.1038/nature10929

5,550万年前から5,200万年前の期間、地球は長期的な温暖化傾向に重なった、一連の急激で極端な全球温暖化事象(高温期)を経た。このような事象の中で最初で最大のものである暁新世–始新世温度極大期(PETM)は、炭素の大量供給、海洋の酸性化、数千年の間に全球の気温が5°C上昇したことを特徴とする。PETMについてさまざまな説明が提案されているが、PETMにおける炭素放出の供給源、規模および時期と、それに引き続く高温期を説明できる満足のいくモデルはまだない。本論文では、イタリア中部で得られた、天文学的に較正された新しいサイクル層序学的記録を用いて、軌道の離心率と黄道傾斜角が共に大きかったときに始新世初期の高温期が起きたことを示す。対応する気候–生態系–土壌シミュレーションは、背景となる温室効果ガス濃度と軌道強制力の増加を説明しており、PETMとそれに引き続く高温期の大きさと時期は、環北極域と南極の陸上永久凍土中の土壌有機炭素の軌道がきっかけとなった分解によって説明できることを示している。この大規模な炭素貯蔵庫は、PETMの直前に長期温暖化が閾値に達すれば、数千ペタグラム(1015グラム)の炭素を大気–海洋系に繰り返し放出することができた。温暖化が極大に達した後に、永久凍土中に貯蔵された土壌炭素が補給されたことが、おそらくそれぞれの事象後の急速な回復の一因となっており、次の高温期に際しては、反応しやすい炭素貯蔵庫を提供できた。背景となる気温はPETMの後も上昇し続けたので、永久凍土の地域的広がりが着実に減少した結果、利用できる炭素貯蔵庫は徐々に小さくなり、その後の軌道強制力の極大期には高温期が小規模になった。地球軌道の性質と永久凍土からの土壌炭素放出を結びつける機構から、高温期の顕著な特徴を説明する統一モデルが得られる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度