Letter 進化:不完全な擬態の進化に関する比較解析 2012年3月22日 Nature 483, 7390 doi: 10.1038/nature10961 適応の例外的な例にはよく知られていることが多いが、自然選択の結果の中には完成にはほど遠いと思えるものもある。例えば、ハナアブ類(双翅目ハナアブ科)の多くは、毒針を持つ膜翅目の外見だけを模倣した無害な(ベーツ型)擬態を行う。しかし、一部のハナアブ種は非常にうまく擬態しているとみなされるが、モデルとの外見上の類似点がわずかしかないものもあり、その理由は明らかになっていない。我々は、旧北区に生息するハナアブ類の擬態忠実度に見られる種間のばらつきを説明するのに提唱されている仮説を評価するため、比較解析の手法を用いた。最も妥当な説明は、小型のハナアブ種は捕食者にとって餌としての採算性が低いために、擬態忠実度にかかる選択圧が弱くなるというものであることがわかった。特に、今回の知見を従来の研究成果と組み合わせることにより、不完全な擬態に関するいくつかの重要な仮説を棄却できる。つまり、第一に、擬態忠実度に対する人間の評価が形態計測的な測定値および鳥類による評価の双方と正に相関していることで、これは擬態忠実度のばらつきが人間の知覚に基づく単なる錯覚ではないことを示している。第二に、多モデル仮説が求めるような、外見的に複数の異なる膜翅目モデル種の中間状態となるハナアブ種は多次元空間内に存在しない。第三に、擬態忠実度と数度との間に負の関係が存在することを示す証拠は認められず、これは血縁選択仮説に疑問を投じる。対照的に、擬態忠実度と体サイズの間の強い正の関係は、選択緩和(relaxed-selection)仮説を裏付けており、そのことは、餌として採算性の低い種にかかる捕食圧が弱く、擬態の完全性に対する選択が軽減されることを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る