Letter 物理:トラップした反水素原子の共鳴量子遷移 2012年3月22日 Nature 483, 7390 doi: 10.1038/nature10942 水素原子は現代物理学で最も重要で、また大きな影響を及ぼしているモデル系の1つである。そのスペクトルを理解する試みは量子力学の初期の歴史と発展に密接に関係している。水素原子が偉大なのはそれが単純であり、またそのスペクトルの測定および理論との比較が正確に行える点にある。現在、そのスペクトルは基礎定数の値を決定し、また量子電気力学の妥当性、またその反物質版である反水素の測定結果との比較によるCPT(荷電共役、パリティ、時間反転)対称性の妥当性など、現代物理学の限界という難問を解くための有用な手段となっている。本論文では、純粋な反物質原子の分光研究により、反水素における共鳴量子遷移の実証を報告する。反水素原子の内部スピン状態を操作して、その陽電子基底状態の超微細準位間で磁気共鳴遷移するようにした。共鳴マイクロ波放射を使って、ALPHA装置中へ磁気的にトラップした反水素原子の陽電子スピンをフリップした。このスピンフリップによって、トラップした反原子のトラップからの放出が起きる。オン共鳴するマイクロ波を照射したトラップ原子のうち残った原子の比率を、オフ共鳴のマイクロ波を受けた場合の原子の比率と比較して、共鳴相互作用を示す証拠を探した。実験の1つで、マイクロ波オフ共鳴では110回のトラッピング試行で23個の生き残った原子(1試行当たり0.21個)を検出したのに対し、マイクロ波オン共鳴では103回の試行で生き残った原子はたった2個(1試行当たり0.02個)しか検出されなかった。マイクロ波によって放出された反水素原子の消滅を直接検出した結果についても述べる。 Full Text PDF 目次へ戻る