Letter 医学:IDH変異はヒストンの脱メチル化を阻害して細胞分化を妨げる 2012年3月22日 Nature 483, 7390 doi: 10.1038/nature10860 神経膠腫、急性骨髄性白血病(AML)や軟骨肉種では、イソクエン酸脱水素酵素1(IDH1)および2(IDH2)の頻発する突然変異が見つかっており、こうした変異はα–ケトグルタル酸から2–ヒドロキシグルタル酸(2HG)を産生する新たな酵素特性を持つことが共通している。本研究では、2HG産生型のIDH変異体は、細胞系譜特異的な前駆細胞が最終分化細胞へ分化するために必要なヒストンの脱メチル化を阻害しうることを報告する。神経膠腫患者からの腫瘍サンプルで、IDH変異は神経前駆細胞で発現している遺伝子に富んだ独特な遺伝子発現プロファイルを示し、これはヒストンメチル化の増加と関連していた。変異型IDHのヒストンメチル化促進能が、形質転換していない細胞での細胞分化阻害に関与するかどうかを調べるために、in vitroでの脂肪細胞分化に対するIDHの新形質変異の影響を調べた。変異型IDHあるいは細胞浸透性の2HGを導入すると、細胞系譜特異的な分化遺伝子の発現誘導の抑制と細胞分化の阻害が引き起こされた。これは抑制的ヒストンメチル化標識の著しい上昇と相関していたが、プロモーターDNAのメチル化には目立った変化は見られなかった。また、神経膠腫でも同様のヒストンの抑制的標識レベルの上昇が認められた。2HG産生型のIDH変異体を不死化した星状細胞へ安定導入すると、ヒストンメチル化の漸進的な蓄積が引き起こされた。調べたヒストン標識のうち、培養細胞の継代に伴うDNAメチル化の上昇に先行して、H3K9のメチル化の再現性のある上昇が見られた。さらに、2HGにより阻害されるH3K9脱メチル化酵素KDM4Cは、脂肪細胞の分化中に誘導されており、RNA干渉によるKDM4Cの抑制が分化阻害に十分であることがわかった。以上の結果は、2HGはヒストン脱メチル化を阻害でき、2HGによるヒストン脱メチル化の阻害のみで形質転換していない細胞の分化の抑制に十分である可能性を示している。 Full Text PDF 目次へ戻る