Letter 生化学:多価シグナル伝達タンパク質の集合における相転移 2012年3月15日 Nature 483, 7389 doi: 10.1038/nature10879 細胞は、オングストロームからマイクロメートルの範囲の長さスケールで編成されている。しかし、オングストロームスケールの分子特性がマイクロメートルスケールの巨視的特性へと変換される仕組みは、詳しく解明されていない。本論文では、さまざまな合成多価巨大分子(多ドメインタンパク質やRNAなど)間の相互作用によって、急激な液–液デミキシング(脱混合;demixing)が起こり、水溶液中にマイクロメートル程度の大きさの液滴が生じることを明らかにする。この巨視的転移は、小型の複合体と大きく動的な超分子ポリマーとの間の分子的転移に相当する。相転移に必要な濃度は、相互作用する分子種の価数に直接関係している。N–ウィスコット・アルドリッチ症候群タンパク質(N-WASP)と呼ばれるアクチン調節タンパク質が、生物学的な結合相手であることが明らかになっているNCKやリン酸化ネフリンと相互作用している場合、相転移は、アクチン核形成因子であるArp2/3の結合にかかわる活性の急激な上昇に対応している。相転移はネフリンのリン酸化の程度に支配されており、この系のこの特性が、キナーゼによる調節作用に合わせて制御されうる仕組みを説明できる。多価の系は広く存在することから、生物学的性質全体にわたって情報の空間的組織化と生化学的調節に相転移が用いられている可能性が考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る