Letter 神経:神経変性の起きている脳における認知機能のエピジェネティックな阻害 2012年3月8日 Nature 483, 7388 doi: 10.1038/nature10849 認知機能の低下は、アルツハイマー病などの中枢神経系の神経変性疾患のほとんどで見られる衰弱性の特徴である。このような障害を引き起こす原因についてはあまりわかっておらず、有効な治療法の開発が遅れている。本研究では、神経変性が起きている脳における認知能力が、エピジェネティックな遺伝子転写阻害によって抑制されており、しかもそれが可逆的である可能性を示す。この阻害はヒストンデアセチラーゼ2によるものであり、この酵素はin vitroでのアルツハイマー病関連の神経毒性傷害によって増加し、2つの神経変性マウスモデルおよびアルツハイマー病患者でも増加が見られた。ヒストンデアセチラーゼ2は、学習と記憶に重要な遺伝子に結合してヒストンアセチル化を減少させ、それに伴ってこれらの遺伝子は発現の低下を示す。重要なことに、短鎖ヘアピンRNAを用いたノックダウンによりヒストンデアセチラーゼ2の蓄積を打ち消すと、それらの遺伝子の抑制が解除され、構造とシナプス可塑性が回復し、神経変性による記憶障害が消失する。以上の知見は、ヒストンデアセチラーゼ2に対する選択的阻害剤の開発を推奨するものであり、神経変性後に認知能力は完全に消失しているのではなく、このエピジェネティックな阻害によって単に低下しているにすぎないことを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る