Letter 医学:皺脳類である霊長類でのPSD-95阻害剤を用いた脳卒中治療 2012年3月8日 Nature 483, 7388 doi: 10.1038/nature10841 虚血に対するヒトの脳の脆弱性を薬剤で軽減させることによって脳卒中を治療する試みは全て失敗に終わっており、そのため、脳卒中は全世界での死亡、能力障害および莫大な社会経済的な損失の主要原因となっている。何十年にもわたり、細胞およびげっ歯類で発見された研究結果をヒトに応用する実験的治療が1,000種類以上行われてきたがいずれも成功しておらず、薬剤を用いた神経保護は高等動物の脳では実現不可能または実行不可能だという考えが広まり、科学的難局を迎えている。我々は、脳卒中治療を進歩させる戦略を提供するために、遺伝、解剖および行動の面でヒトと類似点を持つ、皺脳類の高等非ヒト霊長類を用い、PSD-95阻害剤による神経保護作用について検証した。この薬剤は神経毒性シグナル伝達経路からシナプス後肥厚部タンパク質PSD-95を切り離す有望な化合物である。今回我々は、臨床に関連した状況下で、脳卒中発生後にPSD-95阻害剤を投与した非ヒト霊長類で脳卒中性損傷の予防が可能であることを示す。この治療の結果、磁気共鳴画像法および組織学的測定で梗塞の体積が減少していること、虚血脳組織の全ゲノムスクリーニングでは虚血細胞の遺伝子転写能を維持する力が保存されていること、そして神経行動学分析で神経機能が著しく維持されていることが明らかになった。磁気共鳴画像法によって調べた組織神経保護の程度は、神経機能の保存と強く相関することから、脳組織の完全性は機能に関する転帰を反映するという直観的ながら証明されていない見解が裏付けられた。今回得られた知見は、脳卒中後の組織における神経保護および機能的転帰の改善は、皺脳類である非ヒト霊長類でもPSD-95阻害剤の投与により明らかに達成可能であることを示している。この結果をヒトに応用するためには、さらなる研究が必要である。 Full Text PDF 目次へ戻る