Letter 生化学:リシンデアセチラーゼの機能分析によって明らかになった、HDAC1とp300によるAMPK調節 2012年2月9日 Nature 482, 7384 doi: 10.1038/nature10804 最初にヒストン修飾タンパク質として同定されたリシンアセチルトランスフェラーゼ(KAT)とリシンデアセチラーゼ(KDAC)は、ヒストンタンパク質のリシン残基側鎖の修飾を介して、互いに競合する。真核生物では、クロマチンや代謝、細胞骨格の調節にかかわる多くの非ヒストンタンパク質もアセチル化が見つかっているが、これを行う酵素やアセチル化修飾の基質特異的機能については、まだ解明されていない。また、個々のKDACの機能的特異性の基盤となる機構も不明のままであり、各KDACの基質の種類や範囲も、全体像が明らかにはなっていない。今回我々は、培養ヒト細胞で全ゲノム合成致死性スクリーニングを行って、ヒトの12種類のきわめて重要なKDACの機能的特異性を分析した。遺伝的相互作用プロファイルから、各KDACと多くの重要な基質との間に存在する、代謝や発生、細胞周期の進行といった幅広い生物過程を制御する酵素–基質関係が判明した。さらに、細胞のエネルギー感知プロテインキナーゼ複合体として重要な、アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の触媒サブユニットのアセチル化と脱アセチル化が、HDAC1とp300の相反する触媒作用によって制御されていることが確かめられた。AMPKの脱アセチル化によって上流のキナーゼLKB1との物理的結合が促進され、AMPKのリン酸化と活性化につながり、その結果、ヒト肝細胞での脂質分解が起こる。これらの知見は、栄養素の供給状況とAMPKの上流での細胞応答との協調にHDAC1が果たす、これまであまり重要視されていなかった代謝調節上の役割についての新たな手がかりとなり、また、治療への応用に役立つ可能性がある、個々のヒトKDACの機能的特異性と重要な基質を解明する際に、ハイスループットな遺伝的相互作用プロファイリングが有用であることを実証している。 Full Text PDF 目次へ戻る