Letter 考古:ヨーロッパでの現生人類の初期分散とネアンデルタール人の行動に及ぼした影響 2011年11月24日 Nature 479, 7374 doi: 10.1038/nature10617 解剖学的現生人類のヨーロッパでの出現、および中期旧石器時代から後期旧石器時代にかけての移動の実態に関しては、活発な議論が行われている。解剖学的現生人類がヨーロッパに到達する以前に、ネアンデルタール人が複数の「移行的」な技術複合体を自らのものとしていたという説は多くの研究者が受け入れている。このような技術複合体のうちの2つ、ヨーロッパ南部のウルッツァ文化およびヨーロッパ西部のシャテルペロン文化は、解剖学的現生人類がこの地域に到達した時期や彼らがネアンデルタール人集団と交流した可能性に関する現在の解釈にとって重要である。この2つの文化は、ネアンデルタール人の認知能力および彼らが絶滅した理由に関する現行の議論にとっても重要である。しかし、こうした遺物群を伴う実際の化石証拠はきわめて少ないうえに断片的で、最近の研究では、複数時代の化石の混雑や石器の分析に基づき、シャテルペロン文化をネアンデルタール人のものとする見解に疑問が投げかけられている。今回我々は、カヴァッロ洞窟(イタリア南部)から出土し、ウルッツァ文化と関係付けられて当初はネアンデルタール人のものとされていた乳臼歯を再分析した。微小断層撮影データに基づく2種類の独立した形態計測法により、カヴァッロの標本は解剖学的現生人類のものに分類できることが明らかになった。これらの歯の確定的な状況から、ウルッツァ文化の技術複合体を作ったのがネアンデルタール人ではないことを示す重要な証拠が得られた。さらに、一緒に見つかった貝殻ビーズから、カヴァッロ洞窟のウルッツァ層の新たな年代測定データが得られ、これはベイズの年代モデルの中におさまった。このデータから、それらの歯が暦年代で約4万5,000〜4万3,000年前のものであることがわかった。これにより、カヴァッロの人類遺物はヨーロッパ最古の解剖学的現生人類のものとなり、オーリニャック文化やネアンデルタール人消滅よりも以前に現生人類がヨーロッパ大陸全体に急速に分散したことが確認された。 Full Text PDF 目次へ戻る