Letter 神経:ヒト脳に見られる移動する神経細胞の経路と乳児期におけるその衰退 2011年10月20日 Nature 478, 7369 doi: 10.1038/nature10487 ヒト以外の多くの哺乳類の成体では、嗅球になる運命の新しい神経細胞が脳室下帯で多数産生される。未成熟な神経系前駆細胞は、側脳室の壁に沿って接線方向に連なって移動し、脳室下帯と嗅球をつなぐ吻側移動経路(RMS)に癒合する。これに対して成人の脳室下帯には、脳室周囲のアストロサイトの帯と上衣層を分ける、細胞の乏しい間隙層が存在する。これらの脳室下帯のアストロサイトの中には、in vitroで神経幹細胞として機能するものもあるが、in vivoでのその機能については意見が分かれている。初期の報告では、脳室下帯の増殖細胞はほとんどなく、成人のRMSで移動中の未成熟な神経細胞はまれにしか見つかっていない。これに対し、それ以降の研究では、ヒトの脳室下帯およびRMSでロバストな増殖および移動が示された。今回我々は、月齢18か月未満の小児の脳室下帯およびRMSには、移動する未成熟な神経細胞の大きな通路が存在することを見いだした。しかし、これまでの報告とは異なり、この初期の活動は小児の年齢が上がるとともに減少し、成人期までにほとんど消滅する。意外にも、この限られた神経発生の期間においては、ヒトの脳室下帯の新生ニューロンのすべてが嗅球になるよう運命づけられているわけではなく、1つの主要な移動経路はヒトの前前頭皮質を標的とすることがわかった。以上の知見は、ヒトの出生後早期の脳室下帯および皮質では、接線方向に移動する未成熟な神経細胞のロバストな流れが存在することを明らかにしている。これらの経路は、新生児に影響を与える神経損傷の標的候補と考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る