Letter 生理:ショウジョウバエでは食物由来の匂い物質に対する嗅覚受容体が雄の求愛を促進する 2011年10月13日 Nature 478, 7368 doi: 10.1038/nature10428 多くの動物が、揮発性の性フェロモンを放出して交尾の相手を誘引する。性フェロモンは、発信者の種、性、および交尾の受容性に関する情報を伝達し、受信者の生得的な求愛行動および交尾行動を誘発する。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の雄は、雌に向かって定型的な生殖行動を示し、これらの行動は、転写因子Fruitless(FRUM)の雄特異的なアイソフォームを発現する神経回路によって制御されている。しかし、この重要なモデル生物では、雄の求愛を促進する揮発性フェロモンであるリガンド、受容体、および嗅覚ニューロン(OSN)が同定されていない。今回我々は、FRUM陽性OSNのうち、これまで特徴が知られていなかったニューロン群で、化学刺激感知に関与するイオンチャネル型グルタミン酸受容体ファミリーに属するイオンチャネル型受容体84a(IR84a)が持つ、求愛にかかわる新規機能について報告する。IR84aを発現するニューロンは、ハエ由来の化学物質によって活性化されるのではなく、芳香族の匂い物質であるフェニル酢酸およびフェニルアセトアルデヒドによって活性化される。これらの芳香族物質は、ショウジョウバエ類の食物源および産卵場所となる果実やほかの植物組織に広く認められる。Ir84aの変異は、この種のニューロンで匂いによって誘起される電気生理活性および自発的な電気生理活性を共に消失させ、雄の求愛行動を著明に低減させる。逆に、フェニル酢酸の存在下では雄の求愛がIR84aに依存する形で増強されるが、IR84aを活性化しない別の果実匂い物質の存在下では求愛は増強されない。IR84aを発現するOSNの下流の介在ニューロンは、脳内のフェロモン情報処理中枢に分布している。IR84aのオーソログおよびフェニル酢酸反応性のニューロンはショウジョウバエ科のさまざまな種に存在するが、長距離伝達性フェロモンに依存する昆虫にはIR84aが存在しない。本研究の結果から、ショウジョウバエではIR84aが食物の存在とfruMの求愛回路の活性化とを共役させているとするモデルが考えられる。今回の知見は、採餌場所や産卵場所の選択と生殖行動とを特異的な感覚経路によって協調させるという、独特で効果的な進化的解決法を明らかにしている。 Full Text PDF 目次へ戻る