Letter 医学:ヤブカ属個体群へのボルバキア導入によるデング熱伝播の抑制 2011年8月25日 Nature 476, 7361 doi: 10.1038/nature10356 害虫駆除のために昆虫個体群に対して遺伝子操作を加えることは、以前から提唱されてきているが、遺伝子操作された昆虫が野外に放飼された例はほとんどなく、標的個体群への侵入の成功例は全くない。母性遺伝性の細胞内寄生細菌ボルバキア(Wolbachia)を用いる個体群レベルの形質転換は、細胞質不和合性を介して自然個体群に侵入する強力な感染機序が得られることから、特に関心を集めている。蚊に導入されたボルバキアは病原体の感染を妨げ、寿命などの重要な生活史形質に影響を与える。今回我々は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)からデング熱の媒介昆虫であるネッタイシマカ(Aedes aegypti)に導入されたwMelボルバキアの感染がオーストラリアの2種類の野生ネッタイシマカ個体群に広がり、wMelに感染したネッタイシマカ成体の放飼後数か月間でほぼ固定化した状況について述べる。妥当なパラメーター値を使ったモデルは、ボルバキアに感染した蚊は適応コストが比較的小さく、不安定平衡頻度(侵入が起こるにはこれを越えなければならない)が30%未満であることを示している。以上の知見は、ボルバキアを用いる戦略は、デング熱抑制の実践的方法として配備でき、広い地域にわたる実施が可能であると考えられることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る