Letter

物理:量子分子磁石結晶におけるデコヒーレンス

Nature 476, 7358 doi: 10.1038/nature10314

量子デコヒーレンスは物理学の中心的な概念である。量子情報処理などの応用はその解明にかかっている。量子力学を越えた基礎的な理論すらも提案されており、そこではよりなじみ深い環境デコヒーレンス過程と似た「固有の」デコヒーレンスとして、量子論の破綻が現れると考えられている。我々が通常の環境デコヒーレンス過程をしっかりと扱えるようになるまで、このような応用は最適化できず、そのような理論は検証できない。本論文では、孤立した電子スピン系の理論によって、分子系量子磁石における環境デコヒーレンスを正確かつ検証可能な形で予測できることを示す。分子磁石に関する実験では量子コヒーレント現象の実証に成功しているが、このような挙動を最終的に制限するデコヒーレンス過程は十分に明らかにされなかった。理論的には、分子磁石における環境デコヒーレンスへの主要な寄与は3つ、すなわち、フォノン、核スピン、分子間双極子相互作用からの寄与であると予測されている。我々は、Fe8分子磁石(Feイオンが有機配位子に囲まれている)単結晶に対して高磁場を使って、双極子と核スピンのデコヒーレンスを抑制した。このような高磁場実験では、デコヒーレンス時間が温度と磁場の関数として強く変化することが見いだされた。理論予測は実験により完全に確かめられ、ほかに目に見えるデコヒーレンス源はなかった。このような高磁場においてデコヒーレンスの最大Q値1.49×106が得られた。今回の研究から、温度、磁場、核同位体濃度を最適化することによって、約6×107のデコヒーレンスQ値で、環境デコヒーレンス時間を約500マイクロ秒まで延長できると考えられる。

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