Letter 細胞:胚性幹細胞におけるプロウイルスの抑制には、ヒストンメチルトランスフェラーゼESETが必要である 2010年4月8日 Nature 464, 7290 doi: 10.1038/nature08858 内在性レトロウイルス(ERV)は長端末反復(LTR)をもつレトロウイルス様因子で、哺乳類細胞のユークロマチン領域に広く散在し、マウスゲノムでは約10%を占めている。自発性突然変異の10%以上は、このような寄生性因子の活動によるとされる。体細胞や生殖系列の細胞ではプロウイルスの抑制にDNAメチル化が重要な役割を果たしているが、胚性腫瘍細胞や胚性幹(ES)細胞にはDNAのメチル化に依存しない別の経路があって、外来性のガンマレトロウイルスであるマウス白血病ウイルス(MLV)の転写を阻害する。特に、最近行われたゲノム規模の研究によって、ES細胞のERVではヒストンH3の9番目とH4の20番目のリシンがトリメチル化(H3K9me3とH4K20me3)されているが、マウス胚性繊維芽細胞のERVではこのようなトリメチル化はないことが明らかにされた。しかし、これらのマークがプロウイルス抑制にどのような役割をもつかは、まだ解明されていない。今回我々は、マウスES細胞での内在性レトロウイルスと外来性レトロウイルスのH3K9トリメチル化および抑制に、H3K9メチルトランスフェラーゼESET(SETDB1、KMT1Eともよばれる)とクルッペル結合ボックス(KRAB)結合タンパク質1(KAP1、別名TRIM28)が必要なことを明らかにした。さらに、プロウイルスへのHP1(ヘテロクロマチンタンパク質1)の結合と効果的な抑制には、ESETの酵素活性が不可欠だが、H4K20メチルトランスフェラーゼSuv420h1とSuv420h2は、プロウイルス抑制には必要ないこともわかった。興味深いことに、DNAメチルトランスフェラーゼを三重にノックアウトした(Dnmt1−/−Dnmt3a−/−Dnmt3b−/−)マウスES細胞においても、プロウイルスへのESETとKAP1の結合やESETを介したH3K9トリメチル化は維持され、ERVの脱抑制は最小限にとどまっていた。これらの結果から、DNAメチル化が大規模に再編成される胚発生初期のプロウイルス抑制には、DNAのメチル化には依存しない、KAP1とESETおよびESETを介したH3K9トリメチル化がかかわる経路が必要であると考える。 Full Text PDF 目次へ戻る