Letter 気候:北米西部上空の自由対流圏における春季のオゾン混合比の上昇 2010年1月21日 Nature 463, 7279 doi: 10.1038/nature08708 大気の最下層、つまり対流圏のオゾンは、多くの汚染物質と温室効果ガスの一部を分解する酸化剤である、ヒドロキシルラジカルの重要な供給源である。しかし、高濃度の対流圏オゾンは有毒であり、人間の健康と生態系の生産性に有害な影響を及ぼす。さらに、対流圏オゾン自体が効果の大きな温室効果ガスとして働く。現在の対流圏オゾン総量の大部分は、人為起源のオゾン前駆物質排出の結果であり、1800年代後半以降広範囲にわたるオゾン濃度の上昇をもたらしている。現在、オゾン前駆物質の排出が最も急速に増大しているのは東アジアである。春季に生じる東アジアの汚染物質の大部分は、北米西部に向かって東方へ輸送される。アジアから運ばれた汚染物質からオゾンが生成されることの証拠はあるが、観測が始まったのが1970年代後半だったため、アメリカ合衆国西部上空の自由対流圏のオゾン濃度には、従来の研究では顕著な上昇が見いだされていない。本論文では、北米西部全域の多くの観測拠点から得られた春季のオゾン観測結果をまとめる。1995〜2008年に春季のオゾン混合比が著しく上昇していたことが示され、また1984年以降にオゾン混合比が同程度の速度で上昇していたことを示すさらなる証拠がいくつか得られた。オゾン混合比の上昇速度は、測定結果がアジアからの直接輸送の影響をより大きく受ける時期に最大となることがわかった。これらの結果は、以前行われた複数のモデル研究の結果と一致している。これらのモデル研究は、前駆物質の排出増加(とりわけ北半球中緯度域での)の結果、全球のオゾン濃度は21世紀前半に上昇すると予測し、北米西部はアジアでの排出量の増加に特に敏感であるとしている。春季のバックグラウンドのオゾン混合比の上昇が観測されたことは、アメリカ合衆国がオゾンに対する自国の大気環境基準を遵守できなくなる可能性を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る