Letter 発生:遺伝的プロテオミクススクリーニングにより明らかとなった発生におけるサイクリンD1の転写機能 2010年1月21日 Nature 463, 7279 doi: 10.1038/nature08684 サイクリンD1は細胞周期機構の中核的な構成因子であり、しばしばヒトのがんで過剰発現がみられる。しかし、正常発生と腫瘍形成におけるサイクリンD1機能の全容は、今のところ不明である。本研究では、ハイスループットの質量分析法を用いてマウスのさまざまな器官でのサイクリンD1結合タンパク質を探索するために、Flagおよびヘマグルチニンタグを付けたサイクリンD1ノックインマウス系統を作製した。その結果、細胞周期でのパートナーに加えて、転写に関与する複数のタンパク質との結合がみられた。ゲノム規模の局在解析(ChIP-chip; クロマチン免疫沈降法とDNAマイクロアレイを組み合わせた手法)では、マウス発生時に豊富に発現している遺伝子のプロモーターに、サイクリンD1が結合していることが明らかになった。特に、発生中のマウス網膜(サイクリンD1機能が必須とされる器官)では、サイクリンD1はNotch1遺伝子の上流調節領域に結合し、CBP(CREB結合タンパク質)であるヒストンアセチルトランスフェラーゼをこの部位へ動員することを見いだした。サイクリンD1ヌル(Ccnd1−/ −)網膜では、サイクリンD1の遺伝的除去により、CBP動員の低下、Notch1プロモーター領域のヒストンアセチル化の減少、Notch1転写産物とタンパク質のレベル低下がみられた。Ccnd1−/ −網膜への活性化型Notch1対立遺伝子の導入は網膜前駆細胞の増殖を亢進し、これは、Notch1シグナル伝達の上昇がサイクリンD1欠失の表現型を緩和することを示している。以上の結果から、サイクリンD1は、細胞周期でのよく知られた役割に加え、マウスの発生ではin vivoの転写機能をもつことが明らかになった。我々が「遺伝的プロテオミクス」と名付けた今回の手法は、原則的にどのようなタンパク質のin vivo機能解析にも用いることができる。 Full Text PDF 目次へ戻る